2019.04.08
青果流通漫画の作者、仔鹿リナ講演会を聞いて思った事。
by西岡 さち子
徳島県の西岡さち子です。
少し前の話になるのですが、3/26に大阪市中央卸売市場で、仲買さんたちが主催したイベントに参加してきました。多分史上初かと思いますが、市場で働く仲買さんをテーマにした漫画『八百森のエリー』作者、仔鹿リナさんの講演会。それをなんと、仲買さん自身が企画して市場で講演会してしまうという……!すごくないですか?
私も、曽祖父の代からお世話になっている仲買さんが主催に加わっていらっしゃるし内容もとても興味がありまして、いちご繁忙期ではあるものの参加してきました。
お話の内容をとても雑に要約しますと、市場は農家にとっても消費者にとっても、悪者じゃないし、PRしてないだけでむしろ奉仕者なんだよ!ということです。
理由としては、
【消費者へのメリット1】直売よりも大概手数料が安い(「取引数量最小化の原理」と「 不確実性プールの原理」による。言葉がわからない場合はググってね!)
【消費者へのメリット2】普通は買えないような高額機材での安全性や糖度のチェックが可能
【農家へのメリット1】B品や、見た目だけではない付加価値の高い青果を売るための努力をほぼ無償でやってくれる
【農家へのメリット2】市場に出荷された商品は全量買取&即金で支払い
と、上のような内容をとてもわかりやすくご説明いただきました。よく「市場では扱われない形の悪い野菜」とかいわれて直売がPRしたりしてますが、市場もそういう野菜の行き先、考えてますよって話。他にも色々勉強になったことあったんですが、上の4つの話が私にとっては特に心に響きました。
で、お話を聞きながら農家サイドからも思うところがありまして。
私はUターンで実家のいちご農家を継ぐため手伝いをはじめ、その時に父からウェブでの販売や直販もやってくれといわれたんだけど、改めて販売の条件とか今の取引先とか色々とヒアリングした結果、最重要だと言われたのが
「市場(仲買さん)とは良い関係でいたいから、そこと関係悪化させるような事はするな」
でした。理由は、私たちが作る勝占いちごは仲買さんが農家にここで苺を作るよう呼びかけて育てた、苺の産地だから。実際、うちの産地には毎年何回も市場や仲買さんが視察にいらっしゃったり、今みたいに生産者名の記載がない時代から出荷した苺が不味かったり質が落ちてたりしたら、生産者番号逆引きして速攻で連絡が来て怒られたりしていました。でも、そのぶんうちの産地の苺は品種別での卸値、日本最高値の値付けをしてくださっています。私たちの産地ってわかりやすいマーク(特別栽培とか)は全くないけど、何度も足をはこんでくださってるから、品質の高さを解ってくれてるんですよね。
で、継ぐ前の私はこれがかなり特殊なケースだと思ってたんです。一般のイメージだと、市場っていわゆる買い叩き系だけど、うちはとってもラッキーなことに良い仲買さんがついてるのだと。
たしかに私たち、良い買い手がついてる超ラッキーな産地であるのは間違いないんだけど、八百森のエリー読んで今回の講演会参加したら、そういう産地育成や品質指導も含めて仲買さんの仕事なんだな〜とわかりました。すごい仕事だぜ……お休みとか、どうなっているのか若干気になるわね……!
また、農家側は仲買さんに多大な感謝も感じてるんだけど、一方でとても怖いとも思っていて。そもそも農家は交渉が苦手な高齢者が多いというのもあると思うのですが、最初に直販はじめようとしたとき「市場通さない直販なんかしたら市場や仲買が怒って買ってくれなくなるから絶対にやめろ」と他の生産者や地元農協の職員さんに真顔で言われました。本当かなと思って色々なところに確認しても根拠が全くわからなかったので、市場や仲買さんに直接、恐る恐る聞いてみたら「なんで直販せえへんの?どんどんしたら良いよ!」と、むしろ勧めてもらえて、拍子抜けしました。農家側からしたら、仲買さんって怒ったらめっちゃ怖い先生みたいに捉えて萎縮してしまうとこもあるんだよね。まあ普通、大人になって怒られることなんてないから、ちょっとわかるかも💦でもこうやって怒ってもらえるって本当に幸せなことで、おかげでうちの産地のいちごは高品質を維持することができてる、っていうのが実際いちごを直販でも販売しはじめてわかったことなのです。
直販は直販で、消費者がどういうワードに敏感になってるか、味や好みを肌感で感じることができるのでそれを作物にフィードバックしやすくなるし、超良いかんじの自分好みなパッケージ使って高価格商品出してブランディングしちゃったりできるのでとってもメリットあるんですよ。しかもわずかでもブランディングが成功したり、露出が増えたら仲買さんだってたぶん良い値段にしやすくなるしね(←これは私の希望的観測だけどね!)。生産者が直接売ってるってだけでウケがいいから売りやすくてイメージも良いし。産地にある直売所だとその日にとれた鮮度の高いものをコールドチェーン等を切らすことなく並べられますし。それぞれ良いとこはありますが、直売はもともと印象が良いのに比べて市場や仲買は外野からよく悪者にされやすいから、そのあたりの理解が進むといいな。
『八百森のエリー』は、農業女子PJに興味のある人ならたぶん楽しめる内容かと思いますので、ぜひ野菜にまつわるお仕事の理解につなげてみてください!
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