農業女子PJ SDGsへの
取り組み

MENU

2019.02.15

【農業女子の知恵袋 第15回】

by農業女子プロジェクト事務局

スマ-ト農業で省力化

はじめまして、光吉農産の光吉利絵と申します。

%e3%82%b9%e3%83%9e%ef%bc%8d%e3%83%88%e7%b1%b3%e8%b2%a9%e5%a3%b2

光吉農産は、佐賀県の南部に位置する佐賀市川副町にあり、明治時代から四代続く米農家です。現在の耕作面積は約20㏊で米・麦・大豆の生産と、飼料用として稲わらの収集・販売をしています。

働き手は、私共夫婦と息子2人の4人です。

4%e4%ba%ba%e5%86%99%e7%9c%9f

 

長男が就農するまでは、夫と義母と私の3人で作業しており、刈り取った米・麦・大豆は、カントリーエレベーターに持って行き、全て農協出荷していましたが、長男の就農をきっかけに、昨年乾燥調製施設を新築し、お米の販売を始めました。

%e6%96%bd%e8%a8%ad

整備した乾燥調製施設

実は、長男が就農するのはわかっていたのですが、次男まで就農するとは思っていませんでした。長男は地元企業に3年間お世話になった後2年前に就農。次男は3年前に関東の企業に就職しましたが、社風に馴染めずに1年半で帰って来てしまいました。

そこから、4人で農業することになったのです。

%e3%82%b9%e3%83%9e%ef%bc%8d%e3%83%88%e7%b1%b3%e7%a8%b2%e5%88%88%e3%82%8a2 %e3%82%b9%e3%83%9e%ef%bc%8d%e3%83%88%e7%b1%b3%e7%a8%b2%e5%88%88%e3%82%8a

それまでは、義理の両親から受け継いだ昔ながらの作業も多く、息子達からすると効率的ではなく、『3K』と言われる『きつい・きたない・かっこ悪い』農業に思えたようです。

すると彼らは、もっと効率的な農業をして行こうと言い出したのです。今のままでは経営規模を拡大していくのは困難ではないかと。

彼らはまず、空撮用のドローンを購入して空から稲の観察をしたいとのことでした。

そこで、私がピン!ときたのが、佐賀大学の構内に本店を構えるAIを開発する会社のシステムでした。その企業のことは、テレビや新聞、セミナー等々で紹介されていたので知っており、地元の企業ということもあってすぐにこれだと思ったのです。

早速、問合せメールをすると、すぐに担当の方が来てシステムの説明をして下さいました。

システムは次のようなものです。

・毎日(強風・雨天以外)ドローンで圃場を空撮する(ドローンは無料貸出)

・空撮したデ-タをクラウドに上げる

・デ-タをAIが解析し「ウンカ」や「害虫」の被害をいち早く見つける

・「ウンカ」や「害虫」の被害が確認されたら、その部分だけにピンポイントでドローンを使って農薬を散布する(農薬は農家が準備する。)

・農薬を部分散布することで、農薬の使用量を抑えたお米・大豆ができる

・収穫したお米や大豆は企業が全量買取りをして「スマ-ト米」「スマ-ト野菜」として販売する(買取り価格は卸売業者さんとほぼ同じ)

・買取り代金に加えて、販売額の一部を生産者にキックバックする

大まかな説明ですが、このような内容です。

このお話を聞き、我が家で検討した結果、1.5㏊の水稲と45aの大豆を契約して「スマ-ト農業」を取り入れてみようということになりました。(昨年の作付は水稲16ha・大豆4haなので約1割の面積で契約)

水稲は田植え後1ヵ月から、稲刈りの1週間前まで、大豆は発芽して1ヵ月経った頃から、刈り入れの2週間前までを、ほぼ毎日息子達がドローンで空撮してクラウドに上げていました。

%e7%a9%ba%e6%92%ae%e6%ba%96%e5%82%99

空撮の準備をしているところ

昨年は「ウンカ」の発生が少なく、AIが農薬散布の必要なしと判断したので、契約圃場には除草剤以外の農薬は散布せずに済みました。

大豆は害虫(ハスモンヨトウ)が発生したので部分散布してもらいました。それも、最新鋭のドローンで虫の活動が活発になる夜間に。GPSを使うので暗い夜でも問題はなく、誤差範囲数センチ。AIが指示した箇所のみにピンポイント散布してもらいました。

%e5%a4%a7%e8%b1%86%e5%a4%9c%e9%96%93%e6%95%a3%e5%b8%832

ドローンを使った夜間散布の様子

%e5%a4%a7%e8%b1%86%e5%a4%9c%e9%96%93%e6%95%a3%e5%b8%83

AIを使って解析すると、人の目では確認できない初期の段階で害虫被害の発生を察知できるので、被害が広がる前のピンポイント散布が、かなり効果があるようです。

契約をしていない圃場には例年通り全体に農薬を散布したのですが、15ha程の水田だと真夏の炎天下に3日かかります。大豆も1日がかりの作業です。しかも、それを2回ずつ行います。

「ウンカ」の発生がひどい年には臨機防除も行いますので、かなりの労力と農薬が必要になります。「ウンカ」の被害が広がると、大切に育てた稲が全面枯れてしまう恐れもあるので、毎年かなり神経をとがらせて観察する必要があるのです。

契約圃場は、毎日ドローンで空撮をしてクラウドに上げるという作業はありますが、若い息子達にとっては簡単な作業で、むしろ楽しんでやっていました。

近所のおじさんには、遊んでいるようにしか見えなかったと思います(笑)

収穫量も慣行栽培と変わらず、特に問題はありませんでした。

%e3%82%b9%e3%83%9e%ef%bc%8d%e3%83%88%e7%b1%b3%e4%bb%95%e4%b8%8a

「スマート米」の仕上げ

担い手不足・人手不足が懸念されている現況を考えると、省力化できる「スマ-ト農業」はこれからの農業を支える大きな力になると思います。

ただ、農作物の栽培や管理をAIやロボットだけに任せてしまうとなると、きめ細やかな栽培や管理ができずに、コストばかりが増えてしまい減収減益につながる恐れもあるのではないでしょうか。

スマ-ト化して省力化し、それによって人が楽になったことで、それまで以上の細やかな栽培管理が出来るようになり、結果的に増収増益になれば素晴らしいことだと思います。

これからも色々な「スマ-ト農業」にチャレンジして、我が家に合ったシステムを見つけ、経営の安定や経営規模の拡大につなげていければと思っています。

 

関連する記事

最新の記事

おすすめ記事RECOMMEND

アーカイブARCHIVE