2018.07.20
【農業女子の知恵袋(第9回)】
by農業女子プロジェクト事務局
こんにちは。富山県入善町で、お米を中心に大豆やネギ、特産の「入善ジャンボスイカ」を栽培している「(株)アグリ」たきもと社長の海道瑞穂(かいどう みずほ)と申します。
(株)アグリたきもとは、2010年(平成22年)3月に設立しました。それまでは、父が脱サラして頑張っていたのですが、平成16年頃から、周りの兼業農家から田んぼの全面委託が殺到し、経営面積がどんどん拡大する中で、私は少しでも父を助けたいと思い、手伝い程度なら…と、デザイン専門学校卒業と同時に就農しました。
元々兼業農家だったため、農作業の大変さは幼いころから知っていましたし、正直農業が嫌いで「大きくなったら絶対田んぼなんかせんわ!」と思っていました。ですが就農して13年、今は農業以外の仕事をしている自分が想像出来ないくらい農業が好きです。「もっと農業する若い人が増えればいいな」という思いで、少しずつ農業のイメージを変えていけるよう楽しみながら農作業しています。
家族、従業員、関わってくださっている全ての方々にはもちろん感謝しているのですが、農業という生業だからこそそう思えるので、改めて農業にも感謝しています。
稲刈後の乾燥調製の重労働からの解放を目的に2010年(平成22年)にライスセンターを建設しました。元々は祖父の大工小屋で籾摺り作業を行っていたのですが、面積増加に機械設備が追い付かず、連日深夜2時頃まで作業する日々でした。さすがに身体がしんどくなり、法人化と同時に思い切ってライスセンターを建設し、現在では稲刈作業は全員9時~17時には終了。普段の作業より楽になりました。設立当時は総面積45haで、8年経った現在110haと2倍になっていますが、作業効率は上がり休みも増えました。
良く見て頂くとライスセンター内の鉄骨が…ショッキングピンクです♪
なにぶん代表就任時はギャルだったもので後先考えずにこの色に決めたのですが、作業へのモチベーションも上がりましたし評判も良く、結果としてよかったです。
外見は派手ですが、乾燥調製設備は最新のスペックのものを随時投入しているので、作物の品質管理は社員全員が責任を持って行えるよう徹底しています。そんな作業所の二階の一角には、農作業所に似つかわしくないカントリー風のアトリエがあります。私の母は生け花の先生で、農繁期以外はここで生け花教室を開いています。
アトリエでは、数年に一回「アグタキマーケット」というイベントを開き、農業とオシャレをMIXさせた小物などを展示販売しています。
農業だけに追われていると、自分が女性であることを忘れてしまい、オシャレやメイク、女性にしかわからない楽しみを後回しにしがちですが、父が「それだと農業している意味がない。やりたいことを楽しみながら作業できることこそが作業効率をあげる」という理念を持ち、理解してくれたからこそ弊社の農作業所は今のカタチになっています。
農繁期は、一度ほ場に出るとなかなかトイレに行けないことから、作業所とは別の場所に常設のトイレを設置しました。もちろん水洗!最初は仮設の良くあるタイプでいいんじゃない?と言っていましたが、ちゃんとしたものを建てることで周りの目も変わりました。このトイレの内装は女性はピンク、男性は紫で、分けることによって各々清潔に使おうという気持ちも保てています。
女性用トイレ 男性用トイレ
昨年2月に建設した休憩所は、一階はシャワールーム、ロッカールーム完備の男性専用休憩室。そして二階は完全禁煙の女性専用休憩室です。以前は簡易コンテナを使った男性のみの休憩所だったのですが、何より農業は身体が資本!やはり環境が良くないと良い仕事は出来ないと思い、建設に踏み切りました。現在ある介護休暇だけでなく、いずれは産休育休制度も導入し、もっと女性が働きやすい環境を整えていきたいと思っています。
私は、普段、大型の機械を駆使した水田作業全般を担当しています。時期によっては、1日の大半をトラクターやコンバインの中で過ごすので、内装は自分の好きなようにカスタムして「姫トラ」と呼んでいます。私は自分で曲を作るぐらい音楽が好きなのですが、父にトラクターのスピーカーを音の良いものに二回変えてもらいました。部屋にいるときもトラクターにいるときも同じような感覚なので、長時間の代掻きも全然苦痛ではなくむしろ楽しいです。
そのおかげで、周りの方から「若い女性が大きい農機具に乗っていると気持ちがいい!あんたの所に田んぼを任せたい!」と有難い声をかけて頂くようになり、結果として面積増加に繋がったというメリットもあります。最近、20歳から乗っている愛車の作業時間が6000時間を超えましたがまだまだ現役です♪
↑姫トラ
↑ 姫トラのハンドル
私は20歳で就農、24歳で代表就任。現在32歳です。元々デザイン関係の仕事に就きたかったのですが、農業を手伝うことになり夢をあきらめていました。ですが最近、自分でお米のパッケージをデザインして商品として販売しています。お米からパッケージまで、すべて自分で手掛けてカタチに出来たこと、きっとこれは農家じゃなかったら出来なかったことです。
農業を始めて10年はガムシャラに現場の農作業に追われていましたが、これからは
「農家でもこんな事ができるんだ!」
「農業って楽しそう!」
「私もトラクターに乗って仕事がしたい!」
と、一人でも多くの女性に思ってもらい、農業のイメージをより良いものに変えていきたいです。
一人でも元気のある人が増えれば、確実に環境は良くなり周りのモチベーションもあがるはずです。
それが、父が私を㈱アグリたきもとの代表にした意味なのだと思います。
「農業をもっとオシャレに」
↓アグリたきもとHP
関連する記事
最新の記事
-
ピックアップ記事が入ります。
-
東海農政局 2024.09.09
-
九州農政局 2024.09.06
-
九州農政局 2024.09.06
-
東北農政局 2024.07.31